上海とサトウキビの思い出

随想録

 夏になると思い出す上海語学留学中の出来事がある。

 ある夏の日のこと。家に日本人の友達が遊びにきていたところに、中国人ルームメートのソン君が袋いっぱいのサトウキビを抱えて帰ってきた。

 それまでも道端でサトウキビが売られているのは知っていた。長さ2mほどの節のたくさん付いたサトウキビの茎が、地面に山積みされたり、壁などに何十本も立てかけられたりしているのを町のあちこちで目にした。見た目は茶色い竹のようなサトウキビを、ナタで皮を剥いで30〜40cmほどに切って売っているようだった。皮を剥ぐ前のサトウキビには泥もついていて、車が通るたびにホコリも舞い、決して清潔とは…いえない。

 衛生面が心配だし、どうやって食べるのかも分からず、とてもじゃないが買う勇気はなかった。

 テーブルの上に山積みに置かれたサトウキビに私たちが驚いていると、ソン君はサトウキビをガシッとつかみ、
「ボク、これ大好きなんだ」
とサトウキビをそのままガジガジかじりだした。

 それを見た日本人3人は「おおーっ!!」

 そして勧められるままに、みんなでサトウキビを無言でガジガジ ガジガジ ひたすらガジガジ。

「うーん、甘いけど繊維が口に入って…ペッペッ」

「歯が正しい位置に収まった感じがする…」

「顎が疲れてきた…」

 おのおのサトウキビ初体験の感想を口にしたのであった。

 道端に無造作に置かれたサトウキビと、散乱した外皮の山。Tシャツを胸のあたりまでまくり上げ、お腹丸出しで堂々と歩くおじさんたち。あの懐かしい上海の夏の光景は今でも見られるのだろうか。

生のサトウキビをネットで購入できるようです。ガジガジ体験をしたい人は参考までにコチラ

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