こんにちは。映像翻訳者で薬膳研究家のTUGUMI(つぐみ)です。
皆さん、中国ドラマってどんなイメージですか?
私の中で中国大陸ドラマというと、やたらと人が死んでいき恨みや復讐劇のドロッドロのイメージがすごく強かったんです。超重い…
それに、昔はあまりカッコいいと思える男性俳優があまりいなくて、日本人と中国人の男性の好みって違うんだなーと思ってました。それに女性だとすっごい美人なのに泣くシーンなんかはもう迫真の演技で、「あ、あ、あんなにきれいな人が鼻水垂らしながら号泣してる!」と見ているこちらがアワワ…となることがよくありました。
そんな印象だったことと、仕事が忙しかったこともあり、中国ドラマをあまり見なくなっていました。そして、しばらく期間があいて再びドラマを見るようになった頃、あまりに面白くてびっくりしたドラマがありました。それが『贅婿[ぜいせい]~ムコ殿は天才策士~』(原題:贅婿)です。


「贅婿[ぜいせい]~ムコ殿は天才策士~」(原題:贅婿)
2021年 / 中国ドラマ / 中国語 / 全36話
監督:鄧科
脚本:秦雯
出演:郭麒麟、宋軼、戴向宇、蒋依依、高曙光
【ストーリー】現代でやり手ビジネスマンだった主人公が友人に裏切られ、何者かに殴られて目を覚ますと、そこは武王朝。借金のカタに布商を営む蘇家の入り婿になる寧毅ー)に生まれ変わっていた。妻の蘇檀児(スー・タンアル)が家業を継ぐ証である実印を手に入れられたら寧毅の借金は帳消しになり自由の身になれるという取り決めのもと、現代で培った知識やビジネスセンスを活かしながら2人で協力していく。そして檀児は無事に家督を継ぐことになるのだが…
武王朝に転生した寧毅が当時では革新的なアイデアを次々と打ち出しいくのですが、コメディ的要素が存分に盛り込まれており、軽快なリズムで進められていきます。思わずクスッと笑うシーンもあり、見ていて楽しくなります。中国のコメディドラマってこんなにレベル高かったの!?と衝撃を受けました。
ちなみに寧毅役の郭麒麟(グオ・チーリン)は中国では有名な「相声」の役者さんです。「相声」とは中国の伝統的な話芸で、日本でいう漫才のようなものです。そして彼の父親は徳雲社という相声の団体を立ち上げた相声界の大御所なんです。
あのテンポのよさ、絶妙な間や雰囲気は郭麒麟が人を笑わせるプロだからなせる技なのかもしれませんね。中国では方言の理由などから声が吹き替えられることが多いのですが、寧毅の声は郭麒麟本人のようです。
そしてこのドラマ、映像も美しいんです。おすすめは第7話の濮園詩会のシーン。寧毅が煙とともに歌いながら現われます。現役を退いたかつての人気芸妓の聂云竹が歌に合わせて舞う姿に魅了されます。このシーン、好きすぎて何度見たか分かりません。このドラマで一番好きなシーンです。
ここでも、ドライアイスらしきものを筒で吹いて煙を送ったり、照明器具のようなものを使ったり、ワイヤーを使って空を飛んだように見せるなど、現代の知恵を最大限活かして演出してくれます。
この時に寧毅が歌うのが、蘇軾が中秋の名月を詠った「水調歌頭」という有名な詞にメロディをつけたもので、このドラマのエンディング(「水調歌頭」鄭雲竜)でもあります。この曲もとても美しい。
鄧麗君(テレサ・テン)もこの詞を使った曲「但願人長久」を歌い、その後、王菲(フェイ・ウォン)がカバーしています。メロディは違いますので、聞き比べても面白いかもしれませんね。
ちなみにこの「水調歌頭」の詞は、中秋の名月を歌ったものとしては最高の作品と評されているそうです。中国ドラマ「慶余年」27話で范閑が酔っ払いながら名詩を次々と吟じてみせるシーンにも出てきます。先に「贅婿」を見ていたので、「あっ!贅婿のエンディングの詞だ!」とうれしくなりました。
千年近く前に詠まれたこの歌が現代まで伝わり、歌い継がれているなんてステキだと思いませんか?
さて、ドラマ中盤以降は商売から離れ、政治や争いに関わっていきます。コメディ的要素も少し残しつつ、だんだん重みのある内容へ移っていきます。現在、中国で続編を撮影中なのですが、そちらは政治色がより濃くなりそうな気がします。大好きな「贅婿」続編の字幕翻訳に関われたら幸せだなあと、ひそかに思っているTUGUMIです。
超おすすめ中国ドラマの「贅婿[ぜいせい]~ムコ殿は天才策士~」をご紹介しました。本当に楽しく気持ちよく見られるドラマです。機会があればぜひ見てくださいね!