こんにちは。映像翻訳者で薬膳研究家のTUGUMI(つぐみ)です。
旅行など中国に行く機会があると、よくDVDショップで友達や店員さんにおすすめドラマを聞いて購入していました。詳しい人のおすすめだけあって、面白い作品が多かったです。
その中でも、見ていて思わずハッとなったドラマがありました。それが「玉観音」です。「息をのむ」ってこういう事なんだ!」というくらい展開がすごいです。
玉観音
2003年 / 中国ドラマ / 中国語 / 全27話
監督:丁黒
原作:海岩
脚本:海岩、張海波、楊連元
出演:孫儷、佟大為、何潤東、杜源、房子斌、海清
【ストーリー】楊瑞(ヤン・ルイ)はテコンドー道場で雑用の仕事をする女性・安心(アン・シン)に強く引きつけられる。プレイボーイとして知られ優雅に暮らしていた楊瑞だったが、壮絶な過去を持つ安心との出会いで楊瑞の人生は大きく変わり、愛と復讐の渦に巻き込まれていく。
恋愛サスペンスと言われるだけあって、サスペンス的シーンはかなり迫力があります。また、安心が札束をドンッ、ドンッと積み上げ、それによって状況が一変するのですが、「ああ、これが中国社会のリアルなのかな」と思ったものです。
このドラマを見た後、しばらくドラマを見ていない期間がありました。そして再びドラマを見るようになると、このドラマで主人公を演じた孫儷(スン・リー)が「宮廷の諍(いさか)い女」「ミーユエ 王朝を照らす月」「月に咲く花の如く」など数々のヒット作に出ていて、ものすごく驚きました。
孫儷(スン・リー)は演技未経験でこの「玉観音」の主役に抜擢され、同作の大ヒットがきっかけで有名になったそうです。
このドラマで男性主人公を演じた佟大為(トン・ダーウェイ)も、数年後に「レッドクリフ」などの大作映画に出ていて、本当に驚きました。
「玉観音」はドラマの他に映画化もされました。映画版は「デスパレート 愛されてた記憶」という邦題で日本語字幕が付けられています。趙薇(ヴィッキー・チャオ)主演で、ドラマとは雰囲気が違うようなので、また機会があれば見てみたいと思います。
「玉観音」を紹介しようと思っていたら、Amazon Prime Videoで「玉観音」と原作者が同じドラマの「五星大飯店」を見つけ、ついつい一気見してしまいました。こちらもとてもよかったです。

五星大飯店〜Five Star Hotel〜(原題:五星大饭店)
2007年 / 中国ドラマ / 中国語 / 全30話
監督:丁黒
原作・脚本:海岩
出演:郭麒麟、宋軼、戴向宇、蒋依依、高曙光
【ストーリー】ホテルマンを目指して大学に通う潘玉竜(パン・ユーロン)は、学費を払えず休学を余儀なくされるが、隣に住むダンサーの湯豆豆(タン・トウトウ)の助けもあり無事卒業する。念願の五つ星ホテル「万乗ホテル」に就職した潘玉竜は研修中にも関わらず、韓国大企業「時代」の新会長キム・ジエの専属バトラーに選ばれてしまう。真実を信じ誠実に業務に全うしようとする潘玉竜だが、勢力争いに翻弄され…
このドラマは日本語字幕版で見たのですが、オープニングカバー曲が日本語の歌でびっくりしました。中国ドラマでオープニング曲が日本語の曲なんて、本当にそんなことがあるの???と思って調べてみると、日中国交正常化50周年記念ということで、日本版用にオープニングカバー曲が別に作られたようです。
そして、もっと驚いたのは中国版と日本版は最終話が違うということ。日本国内向けのオリジナル脚本で、最終話の再撮影が行われたそうです。日本語字幕版を見て私が感じたのは「もっとドロドロするかと思ったけれど、さわやかに気持ちよく見終えることができた!」というものでしたが、実際の中国版は終わり方が違うようです。中国版を見ていたらこのドラマの印象が全く違うものになっていたかもしれません。
それにしても、このドラマは配役がすばらしかった。主人公のパン・ユーロン役の張峻寧(チャン・ジュンニン)が適役でした。バトラーとして完璧を目指すユーロンとして、手先まで神経の行き届いた青年を見事に演じていました。立ち姿だけでなく、お茶を入れたりカップを置いたりする所作もどれも美しい。指先に空気のクッションがある感じ…って伝わらないでしょうか。ベッドメイキングの仕上げにシーツの端を折り、最後に布と布をスーッと揃えるシーンにはもう惚れ惚れしました。
さて、この「玉観音」「五星大飯店」の原作を書いた海岩。15歳で海軍に入隊し退役後は警察官となり、その後はホテル経営者、インテリアデザイナーを本業としながら作家、シナリオライターとしても活躍していて、彼の著書は数多くドラマ化されています。なんて才能あふれる人なんでしょう!
「玉観音」では海岩自身の警察官としての経験が、そして「五星大飯店」ではホテル経営者としての経験が存分に発揮されています。リアルな描写、迫力、スピード、どれをとってもすばらしい。どんな経験も無駄なものはないんだなと思いました。
ちなみに、海岩が書いた原作小説の「玉観音」「五星大飯店」は日本語訳も出ています。
「玉観音」
「五星大飯店 上」「五星大飯店 下 」
ドラマの「玉観音」と「五星大飯店」では、私は「玉観音」の方が面白かったと思うのですが、日本語字幕があるのは「五星大飯店」だけのようです。
「玉観音」推しの私としては、なぜ「玉観音」の日本語字幕がまだ作られていないのか不思議でなりません。少し古い作品ですが、もし日本語字幕版が作成されることがあれば関われたらいいなあと夢見るTUGUMIでした。
追記:
あとで知ったのですが、「玉観音」はその後、新たなキャストで2011年に「新玉観音」としてドラマ化されたようです。やっぱり名作だけあります!